あと、そう言えば “ これがダメ押し ” みたいな感じで「こちらは仕事で毎日のように通い慣れた道ですので、信号のタイミングはよく分かっているんですよ。」みたいな事も仰っておられましたか。

・・・これはもう、はっきりと申しまして逆効果と言いますか、私に言わせれば完全に墓穴を掘ってしまっています。

申し訳ないが、人間の心理と言うものが何も分かっておられないようです。

人は “ 慣れ ” が1番怖いのです。

「自分は慣れているから大丈夫。」という思い込みが心に隙を生み、ミスを生じさせます。

何事も “ 常にゆとりと緊張感を持って ” です。

「仕事で毎日のように通い慣れている自分の方が、よく分かっているのだから、間違えたりする事は無いのだ。」という思い込みこそが、この方のミスの原因です。

そして、こういう類の主張をする。という事こそが、今回の件の「真因(しんいん)」と言えます。

詰まる所、最初の嘘が雪だるま式に膨れ上がって、引くに引けなくなってしまっている。という事なのでしょう。

これ以上、当事者同士でやり取りをしていても一向に着地点が見えてこない様なので、意を決して警察署の交通課へと「診断書」を持参致しました・・・

 

「あの~すみません。2月15日に○○の交差点で事故に遭った者ですが・・・」

毎年、秋祭りにはお神輿が町内を練り歩くので、道路使用許可証というものを申請します。

ですので、警察署の交通課には多少慣れております。

この時は、少し若いの警察官の方が対応して下さいました。

「はい。事故に遭われたご本人の方でしょうか。」

「えぇ、そうです。 今日でちょうど2週間になるのですが・・その後、何か進展が無いかなぁと思いまして。」

「あぁ、そうですか。・・では、何かご身分を証明できる物はございますか。」

運転免許証を提示し、

「ちょっと、お預かりします。お調べしますのでお待ち下さい。」と資料などが整理された棚の方へ入って行かれました。

すると、ほどなくして別の方と2人で戻って来られました。もう1人の方は一回りほど年配で、上司といった感じです。

「ご本人さんですね。・・・それじゃあ、ちょっと奥の方へ入って来て頂けますか。」

通されたのは、待合室などに置かれている様なソファーがある一角。

「どうぞ、そちらへお掛け下さい。」

「・・・今日は診断書を提出しに?」

「えぇ、そうですね。・・お互いが青信号を主張していて平行線というか、ちょっともう話が前に進まなくなってしまいまして。」

「確証できるものは無いとは言われているのですが、出来る限りの事はやっておきたくてですね。」

「なるほど。 では、こちらの診断書を提出されますと、今後どのようになって行くのかはご存知ですか?」

「・・・そうですね。人身事故へと切り替われば、より詳しくお互いが実況見分とか、警察の方でちゃんとした信号のタイミングなどを計って行く事になるんでしょうか。まぁ、それでも解決に至らなければ最悪、弁護士をたてて裁判?という事になるんでしょうかね。」

「・・・そうですね。裁判という事になりますと、必ずどちらかに決着が着きます。そうなれば当然、非が認められた方には刑事罰が下る事になります。」

「そこはご理解頂けているんですね。」

少しの間があり、手に持っていた資料に目を落として、暫くしてから。

「ご本人さんという事なので言いますが・・・実は警察は、あの後で映像を入手しております・・・。」

「どの場所での、どの角度からの映像かはお教え出来ませんが、事故の映像は入手しております。瞬間の信号の色まで確認は出来ています。」

(はい、来たコレ! えっ、マジか。)・・・なぜか急に緊張してきました。

自身はあるものの、決定づけられる揺るぎない証拠が急にあった。となると、もし万が一にも「あなたの方が赤信号でしたよ。」と言われたらどうしよう💦と不安になってしまいます。

「え?あぁ、そうなんですか。」とちょっと間の抜けたような返事になってしまいました。

しかも結論を言ってくれずにもったいぶるので、しょうがなくこちらから「えっと、それで、どちら側が青信号だったんですかね?」と恐る恐る聞いてみます。

「・・・うん。まぁ、私が直接その映像を確認したわけじゃあないんですがね。」

「・・・あなたの方が有利な結果になるんじゃあないですかね。」

(何?その、断定はしきらない。みたいな言い方?)

「はぁ・・・」 え?どういう事?みたいな顔をしていると、

「あなたが主張されている通りの結果だった。と思って頂いて宜しいかと思いますよ。」

「・・・という事は、こっちの方が青ですか。」

「そういうことになりますね。」

(いや、ちょっと、緊張させんといてーよ。)

(・・・ほらぁ、やっぱりこっちが青じゃん。)

(よう映像が見つかったな・・・警察すご!)

 

・・・やはり、お天道様は見ておられたのです。

人を偽り・騙す事は出来るかもしれませんが、お天道様と自分自身には決して嘘はつけない、偽ることはできないのです。

因果応報。

過去の過ちは、必ず結果として還って来ます。

それにしても、「糺咎顕真」の祝詞をお申し上げしてから、わずか数日でのこの結果。

神様が誓いをお認めになられ、願いを聞き入れて下さったのでしょうか・・・それは分かりませんが、神主としては神様にお力を頂いた。

正しい道へとお導き下さった。と信じております。

 

『神主の体験』その⑪ ~ 魂を磨け! ~ へと続きます・・・

 

続きを読む 『神主の体験』その⑩ ~ お天道様は見ている ~

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身の潔白を証明する為に、真相を究明しようと考え付く全ての事をやりきって尚、ご神前にご祈祷をして神にお誓いを申し上げしてから5日ほど経った頃。

ようやく相手側の保険会社から「こちら側も契約者の証言通りに走行してみて、信号の切り替わりなどを確認しました。」という連絡が入りました。

(ちなみにこちら側の保険担当者は、私が事故の翌日に独自の実証実験を行い結果をお伝えした後、直ぐに現場へ出向いて頂き何回も走行実験をして頂いておりました。)

事故発生から、ゆうに10日以上が経過しての連絡である上に相手の担当者が言うには「契約者の証言通りに走行すれば、こちらが青信号になる。」というものでした。

よくよく聞くと、1つ手前の信号で信号待ちをしており、青になってから10km/hくらいでゆぅ~っくりとで走行すると、交差点の手前で赤から青信号に切り替わります。と言うのです。

・・・ちょっと無理がありませんか?

10km/hと言えば、ちょっと早めのジョギング、ちょっと遅めの自転車くらいのスピードですよ?

そんなノロノロ運転します?

無理して信号のタイミングに合せに行ってますよね。

・・・まぁ、いいですよ。してたとして、

そんなノロノロ運転の車とぶつかって、果たして対向車線の建物の柱にめり込んで、エアバックが作動するほどの衝撃が生まれますか?

記憶に残る事故の瞬間の感覚は “ ノンブレーキで死角から急に飛び出してきた ” というイメージです。

事故の状況が、そんな10km/hなんていう、ゆっくりなスピードではなかった事をはっきりと物語っております。

(ここでも最初の嘘の証言を正当化する為に、また新たな嘘が重ねられてしまいました。)

(しかしさすがに、段々と荒が目立ってきましたね。無理が出て来ている様です。)

そしてもうひとつ。今度は、

何故か、現場に最後まで相手の女性の傍らにずっと付き添っていた “ 同僚の女性 ” の証言を “ 目撃者 ” の証言として提示してきたのです。

この方は、私も、駆けつけていた保険の担当者も現場で直接、話を聞いていますが、たまたま交差点を渡り切ってしばらくしてから後ろの方で事故の音を聴き、戻ってみるとたまたまそれが知り合いの同僚だった。と話していた女性でございます。

・・・いいですか? 離れた所から、後ろの方で音がしたので、戻って来た人です。

“ 目撃者 ” ではありません。自分たちが都合のいいように勝手に “ 目撃者 ” にしてはいけません。

そして、その勝手に仕立て上げられた同僚の “ 目撃者 ” から「音がした瞬間、振り向いた時、女性側の信号は青色でした。」との証言を貰っている。と言うのです。

この方、現場でこちらの保険担当者からも話を聞かれているのですが、その時は「信号の色は確認していない。」と仰っていた。との記録がしっかりと残されています。

・・・当然ですよね。後ろで何か大きな音がして、何事か?と振り返ってみた時、先ずは車の様子やけが人がいないかを確認するのが普通で、瞬時に信号の色を先ず確認する人はいないでしょう。

現場では「信号の色までは見ていませんでした。」と答えていた女性が、10日以上経過してから突如、目撃者とされ何故か「音を聴いて振り向いた時の信号は青色でした。」と証言を変えていたのです。

あれれ?まさか、結託して皆さん、まとめてやらかしちゃってます?

“ 口裏合わせ ” ってやつですか?

 

しかしこの証言。残念な事に、「10km/hで走行して、信号が青色に変わるのを待ってから交差点に進入した。」という説明とは矛盾してしまう事が少し考えれば分かってしまうのです。

何故なら、この方も同じ交差点で、相手の方と同じ進行方向で信号待ちをしてから横断歩道を渡っているのですから。

車が青信号に切り替わるタイミングで交差点へと進入したと言うのなら、歩行者が横断歩道を渡り切るまで待つ必要があります。

でもこの女性は、既に渡り切っていて、交差点からは少し離れた所で音を聴いているのです。

或いは、1つ前のタイミングで交差点を渡っていたとしましょうか。

それなら交差点を渡り切った後しばらくして赤信号に変わり、もう一度青信号に変わるまでには数十秒の時間を要しますので、“ 渡り切ってしばらく進んだ所 ” にはもう既に居ないでしょうね。

(嘘に嘘を重ねるから、この様な矛盾が生じてきます。)

 

いよいよ収拾が付かなくなって来ました。

たまたま居合わせた同僚をも巻き込んでしまって。

このままでは永遠と平行線のままです。

・・・もう、このままでは「いかんな。」

遂に、私は次の日、ちょうど事故から2週間目に当たる3月1日に、警察署へと「診断書」を提出して、「物損事故扱い」から「人身事故扱い」へと切り替えて頂く “ 決心 ” をしたのでございます。

 

『神主の体験』その⑩ ~ お天道様は見ている ~ へと続きます・・・

 

続きを読む 『神主の体験』その⑨ ~ 仕立て上げられた目撃者 ~

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【天地神明に誓う】(てんちしんめいにちかう)

天地におわす全ての神々に約束をする。

約束を違えたら罰せられても良い。といった意味の表現。

また、自分の言うことに嘘、偽りが無い事を固く約束するさま。

 

嘘、偽りの黒い霧に覆い隠された真実に少しでも近づこうと、事故当時のルートを何度も走行してみて独自に実証実験を行ったり、相手側の証言を否定するために第三者へメールで中立公平な立場からの意見を求めたりと・・・

警察や探偵でも無い、一般人の手で出来る事は全てやりきりました。

後は、天命を待つ。という所なのでしょうが、自分は神主でございます。

なので、「神慮」(しんりょ:神の考え・意向。)をお伺いする事に致しました。

冒頭の写真に在りますのは「祝詞」(のりと)と申しまして、神主が神様へお申し上げする内容を大和言葉(やまとことば)で記したものでございます。

 

 

「糺咎顕真祝詞」

咎(とが)を糺(ただ)し、真(まこと)を顕(あらわ)す。祝詞(のりと)

「咎」とは、偽り欺かんとする過ち。

「糺」すは、正しいか否かを明らかにする。また事の是非・真偽・事実や真相などを追及する事。

「真」とは、嘘・偽りの無い真実。

「顕」すは、隠れているものを明らかにする。また、善行等を世間に知らす。という意。

即ち、邪な心を以て偽り、人を欺かんとするものを直し、隠された嘘・偽りの無い真実を明らかにする。といった内容の祝詞でございます。

 

祝詞は基本的に、神主がお祭り・神事の度に自分で作文、製作を致します。

今回の祝詞の内容をざっくり申しますと、

先ずは普段から奉職させて頂いている事への感謝から始まり、去る何時々に何処々でどのような事故に遭うも、御守護をいただいて大きな怪我や他人が巻き込まれる事もなく無事に済んだ事に改めて感服・感謝を申し上げ、

また更に、今現在も非や過ちを認める事の出来ない弱い心から出た、まやかしや嘘・偽りによって真実が覆い隠されている状態なので、ご神慮のままに明らかにして頂き、

もしも邪な考えから人を陥れようとする心があるならば、神の荒ぶる猛々しいお力を以てしてその者を弱い心の淵から引き出して頂き、

咎人であろうとも、まっとうな人の歩むべき正しい道へとお導き、助けてあげて下さい。

私は、この願いを受け入れて下さるのならば、真実を明らかにするために一切の妥協を許さず、あらゆる努力は惜しみません事を天地神明にお誓い申し上げます。

 

・・・といったような内容になります。

 

さて、100%自信があれば天地神明に誓えますよね。

約束を違えたり、自分の証言に嘘・偽りがあれば神様から罰せられるのです。

神様との約束を破れば、石につまずいて転ぶなんて軽い罰ではないですよ。

相手の方にも、自分に100%の自信がお有りなら、ぜひ神前で天地神明に誓って頂きたいものでございます。

 

『神主の体験』その⑨ ~ 仕立て上げられた目撃者 ~ へと続きます・・・

 

続きを読む 『神主の体験』その⑧ ~ 天地神明に誓う ~

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【人事を尽くして天命を待つ】

人間が出来る事は全てやった上で、あとは運命にまかせること。

 

「あなたが、怒鳴るようにして早口で捲し立てるから “ すみません ” と言ってしまっただけで、わたし外国人で日本語が解らなかったから “ はい? ” と言ったのですよ。」と、見事なほどテンプレ通りの返しをされ、

あぁ、これはもう当事者である私が否定や反論をいくらしても、このタイプの人間は “ ああ言えばこう言う ” といった感じにのらりくらりと、この理屈はもう絶対に曲げないだろうな。という事は分かりきっておりました。

そこで思案して思いついたのが、第三者の公平中立な立場からその時の様子はどう見えたのか?を教えてもらうというものでありました。

ここに、差し障りの無いよう個人名などは伏せて実際にやり取りをしたメールを添付させて頂きます。

 

—–Original Message—–

○○○○放送局 放送部

記者 ○○ ○○ 様

突然のメール、失礼致します。

高知八幡宮 権禰宜 ○○ ○○と申します。

ご記憶にお有りかと思いますが、2/15の昼頃に〇○町の〇○食堂がある交差点で交通事故の折に、大変お世話になった者でございます。

その節は、迅速なご対応をして頂きまして、誠にありがとうございました。

その後、気になる様なお体への影響、自転車の破損等は無かったでしょうか?

実は誠に不躾ながら、おりいってご相談がございます。

ご迷惑をお掛けしてはいけませんので、無理そうでしたらお断りくださいませ。

この度の事故は、お互いの車にドライブレコーダーが付いておらず、また防犯カメラも無いという事で確証が得られず、お互いの意見の相違にたいへん苦慮しております。

もし、ご迷惑で無ければ、第三者の中立な目線で、事故直後の様子を思い出せる範囲でお伺い出来れば、ほんの少しでも真実に近づけるのではないかと思い、悩んだ末にご連絡をさせて頂きました。

何と無くの印象だけでも助かるのですが、私と相手の方とのやり取りの様子と言いますか、比較的冷静そうだったのか、もしくは憤慨して早口で捲し立てる様な様子に感じられたのか。など、どんな些細な事でもありがたいのですが、公平な立場から見られてどの様な印象を受けられたのかだけでも教えて頂ければ、大変ありがたく思います。

本当に勝手なお願いで申し訳ないのですが、真相を明らかにするためにも、でき得る全ての努力を、考え得る全ての可能性を模索致しました結果、もしかして気を悪くされるのではないか、ご迷惑をお掛けするのではないか、とも思いましたが、思い切ってご連絡させて頂きました。

ここまでたいへんな長文となってしまいまして、誠に申し訳ございません。

冒頭でも書きましたが、無理そうでしたらお断りくださいませ。

では、失礼致します。

—–Original Message—–

お世話になっております。

○○○○放送局の〇○○○です。

このたびは、大変なところ、ご連絡頂きありがとうございます。

交通事故は少し時間が経ってから体調を崩す人もいます。

○○さんはいかがでしょうか。ご自愛ください。

さて、連絡頂いた件ですが、

私は事故当時、交差点の近くにある○○食堂で料理を待っていました。

なので、事故後についてしかわかりません。

覚えているのは相手の女性が、驚いている顔で、「すみません」と話していることと、

○○さんが冷静で、祭りの帰りに事故にあったと話していたことです。

よろしくお願いいたします。

お力になれない内容かと思いますが、少しでも事件の真相に近づけたら良いなと思います。

—–Original Message—–

○○ ○○ 様○○でございます。お世話になっております。突然のメールにも拘らずに早速のお返事、またお優しいお気遣いのお言葉、誠にありがとうございます。この度の事故の真相を究明したいと考えております私にとりましては、中立公平な立場の方からの情報はたいへんありがたいです。十分にお力を頂きました。本当にありがとうございます。これ以上のご連絡はご迷惑になろうかと思いますので、控えさせて頂きますね。

この先、どうなるかは分かりませんが、自分の中の正義を信じて諦めず頑張って行こうと思います。ありがとうございました。

では、失礼致します。

 

・・・というように、相手側が主張しているような「最初から怒ったように怒鳴って、早口で捲し立てられた。」という証言は覆されました。

私は「冷静に事情を説明していた」との事です。

ありがたい助け舟のお力を頂いて、ひとまずは安心しましたが、このままでは言った言わなかったのイタチゴッコになるであろう事は目に見えていました。

やはり、最後は「警察の捜査」、「弁護士を立てての裁判」と行きつくところまで行ってしまうのだろうか。と気が重くなります。

やれるだけの事はやりました。あとは、「天命を待つ」のみ。

そして、私は神主でございますので、ここは “ ただ待つ ” というのではなく「神慮」をお伺いするのであります。

 

『神主の体験』その⑧ ~ 天地神明に誓う ~ へと続きます・・・

 

続きを読む 『神主の体験』その⑦ ~ 天命を待つ ~

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【咎】(とが)

他人が非難するのももっともな、欠点・過ち、けしからぬ行い。

 

「事故当日と同じルートを走行した、こちらの実証実験の結果」と、「途中から証言を変えたのはどうしてなのか」、という2点を保険会社を通して相手側に投げかけてみました。

・・・帰って来た答えは、

相手側の担当者も、来週には事故当時のルートを走行してみて信号の切り替わるタイミングなどを確認する。という事と

(結構、あちらさんはのんびりしているなぁ。)

証言については、「すみません」と言っていたのは相手(つまり私)に、怒った様子で捲し立てられたから、つい謝ってしまった。

そして、「そちらが赤信号でしたよね?」と言われて「はい」と言ったのは、自分が外国人でまだ日本語に慣れておらず、早口で捲し立てられた為に何と言っているのかが解らなかったからで、聞き直した「はい?」だった。という返答。

(はい、出ました。常套手段。)

常套手段その①

あの時「すみません」と言ったのは、非を認めて謝罪の気持ちから言ったのではありません!

相手が怒っていて、取り乱しているようだったから反射的に言ってしまっただけなんです!

序等手段その②

私、外国人だから早口で言われると何言ってるか分かりませ~ん。

同意の「はい。」では無く、あれは疑問の「はい?」だったんですよ~。

・・・呆れるほど典型的な「言い訳」です。

更に言ってしまえば、最初の嘘を正当化させるために新たな嘘を作りだした。とも言えるでしょう。

こうして嘘が積もり積もって、大きな過ち、けしからぬ行い。他人に非難されるのももっともな「咎」となってしまうのであります。

そして、咎は魂に残ります。 “ 刻まれる ” といった表現の方が近いかもしれません。

この「咎」が許容量を超えると、最悪の場合「魂」に強制リセットがかかってしまう事もありますので、本当に注意が必要です。

 

(いやいやいや・・・そんなに怒鳴ってないし。)

(割と意識して抑えてた方ですよ?)

(けっこう冷静に努めていたつもりやったけどな~)

(いや、確かに怒ってはいましたよ。そりゃあ信号無視で突っ込まれてるんだから・・・ふつう怒るでしょう。)

(けど捲し立てたり、怒鳴ったりはしてませんよ。絶対に。)

(そんなキャラじゃないんですよ。どちらかと言えば静かに怒るタイプでね。って、そんなんどっちでもええわ!)

(だって、日本に来て仕事もって働いてるんですよね? )

(都合が悪くなった時だけ「外国人だから」はちょっと卑怯なんじゃないですか?)

 

相手さんの考え方や様子を見極めるために投げかけた2つの問に対する返答には、明らかな「咎」が感じられました。

さて、この典型的な常套手段の呆れた言い訳をどのようにして覆せるのか・・・

考えを巡らせ、至った答えは「助け舟を求める。」という事でした。

あの日、親切にも食堂からの帰り際に「もしまた何かありましたらご連絡を・・・」と頂いていた記者の方の名刺。

ご迷惑になるかも。と躊躇していましたが、もうこうなってしまえば頼らざるを得ません。

出来得る全ての事はやる!です。

その日の夕方、名刺に記載されたメールアドレスへと「折り入ってのご相談」をさせて頂くのでございます。

 

『神主の体験』その⑦ ~ 天命を待つ ~ へと続きます・・・

続きを読む 『神主の体験』その⑥ ~ 嘘も積もれば咎となる ~

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神社から一番近くの総合病院を訪ねるも「受入停止中」の張り紙が・・・

折しも、県下にコロナクラスターの嵐が巻き起こっていた時期であり、現在は一切の受診が出来ないとの事。

 

 

代わりに受け入れを行っている別の病院に電話をして、予約を取ってから行くようにと病院のリストが書かれた紙を渡され、近場から順に電話をして3つ目の病院でようやく受診できる事に。

待機所に停まっていたタクシーに乗り込み、少し離れた病院へ。

病院の待合室では幾つかのテレビ画面から、終盤を迎えた冬季オリンピックの中継が流されていました。

外科の診察室へと呼ばれ、事故の状況などどのようにして体に衝撃を受けたのかといった簡単な質問と、首や腕などを曲げたり伸ばしたり、そしてそのままレントゲン写真を数枚撮って、ひと通りの診察が終わります。

ひとまずは、人身事故へと切り替えてもらうための「診断書」が出来上がりました。

 

この診断書を持って、即日にでも警察署へ出向いて提出する事も出来ますが、保険会社の担当者と相談し、ここはもう少し相手側の出方を様子見する事となりました。

 

それから2日後、この日も神社から柴巻までの途中にある別の部落ではありますが、同じく「家祈祷」の神事が午前中からありました。

行きも帰りも、事故にあった日とまったく同じルートを通ります。

そこで私は「実証実験」を行ってみようと思い付き、帰り道に車のフロントへ固定したスマホで動画を録画する事にしました。

結果は、案の定「こちらの信号が青。」

 

 

そして、いったん神社に帰った後に、事故で建物の柱を損傷した食堂へ改めてお見舞いへとお伺いし、そのついでに今度は相手側の証言通りの走行ルートでも「実証実験」を試みました。

結果は、こちらも案の定「信号は赤。」

 

 

その後、たぶん両方のルートをあわせて10回ぐらいは走行したでしょうか。

どう考えてもこちら側が青で、相手側が赤。

この「実証実験」の動画を、担当して頂いている保険の方へと送信し、相手の方の保険の担当者を通して、この結果を伝えて頂くようお願いをしました。

そしてまた、ずっと疑問に思っていた「なぜ、最初は“すみません”と謝っていたのを途中から証言を変えたのか?」という点も相手側に確認してもらえるようお願いをしました。

 

何度となく自分の走行ルート、そして相手側の走行ルートを走っているうち、ある真実にふと気付くのですが、嘘をついている人とそうでない人の見分け方。

【真相を明らかにしようと、あらゆる努力を積極的に行う】人が正直者で、

【真実が明らかになると困るので、消極的で何も行動を起こさない】人が嘘つきである可能性がかなり高い。という事です。

1つの嘘は、その嘘を正当化するために、雪だるま式に嘘が重ねられて行きます。

今回の件も例に漏れずそのようになって行くのですが、今思えば相手の方はいったいどのような心境で日々をお過ごしになっていたのでしょうか。

自分の行動に苛まれ、夜もまともに眠れていなかったのではないかと察します。

 

『神主の体験』その⑥ ~ 嘘も積もれば咎となる ~ へと続きます・・・

 

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「神道」はある意味、ものすごく極端に言ってしまえば、罪・穢れの「祓い」でございます。

「神主」である以上、この目の前の、しかも自分自身に降りかかって来た罪・穢れを絶対に見過ごす訳には行きません。

相手の方がどういう考えであろうと、 “ 自分の方が青信号だった ” と言っている以上は、 “ こちらが嘘をついている ” と言われているのと同じ事です。

しかも、出張祭での神事の帰り。

白衣・袴に巴紋の羽織を着ています。

明らかに神社の神主だと分かっていての行為でございます。

これは、私だけでなく神社や神様に対しても行為を働いたのと同義でございます。

たとえ、確証できる物が無く真実を明らかにする事は極めて難しいとしても、私自身と神社の名誉と尊厳をかけて、出来得る全ての事をとことんまで追求し、少しでも真実に近づけるよう努力する。

この罪・穢れを出来得る限り祓い清める事が、神主としての使命である。と、神主としての覚悟を決めたのでございます。

 

その後は、お互いの保険会社から事故担当者がやって来て調書を取ったり、レッカー車が到着して大破した車を運び出す段取りなどが慌ただしく進んで行きます。

私も相手の方ばかりにかまってはおれず、食堂のご主人に連絡先を渡したり、お世話になった記者の方から「何かありましたら、ご連絡を」と名刺を頂いたりと・・・

そうこうしているうち、いつの間にか駆けつけていた相手の女性の旦那さんであろう方から、「今後のお互いのやり取りの為に」とそれぞれの名刺を交換しました。

見ると、某大学大学院 看護学研究科 誰某

名前を見て分かりましたが、どうやら外国の方のようです。

しかもこの大学は、確か4年ほど前になるでしょうか、大学の蔵書約3万8,000冊を焼却してしまうというニュースが全国的に取り上げられ、文字通り大炎上してしまったという・・・あの大学ではありませんか。

当時の学生さんが巫女のアルバイトとしてお勤め頂いておりましたが、自分の通う大学でこの様な事があり「情けない。」と嘆いていた事を思い出しました。

今回の件で、私の中ではもう「不信」でしかなくなってしまいました。

さて、これからどうしたものか。

やるべき事はそう、このまま物損事故として処理をされてしまえば、お互いの話し合い(示談)で、歪なまま無理やりに解決されてしまいかねません。

正しい方が泣き寝入りする様な、うやむやな形のままに解決させるのではなく、先ずは病院の診断を受けて「診断書」を貰い、警察へ提出して人身事故へと切り替えてもらい、そして警察の介入を以って徹底的に捜査して貰わなければなりません。

ひと通りの処理が済んで神社へと帰ってきた後、すぐさま近くの病院へと向かいました。

 

『神主の体験』その⑤ ~ 診断書と実証実験 ~ へと続きます・・・

 

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「では、それぞれお一人ずつ、別々にお話を聞かせてもらいますね。」

「運転手さん、こちらへ来てください。 免許証はお持ちですか?」

とそれぞれ警察の方が二手に分かれて、実況見分が始まりました。

私は先ほどの記者の方にお話した通りの説明を淡々と行い、しばらくしてからお互いの走行状況を確認するためか、警察官2名がインカムを使いながら信号の変わるタイミングなどを計ったりしている様子でした。

その間、私は午後からの神事に影響が及ぶ事を心配して、神社へと食堂の柱にめり込んだ車の写メをlineで送ったうえ電話を入れ、事故にあって車が大破した為に午後の神事を代わって奉仕してもらう必要があるという事と、レッカーの手配が必要であるという事を連絡していました。

ひと通り連絡を終え、ふと相手の方を見るとそちらも警察との話は終わっているようでした。傍らにはいつの間にか別の女性が・・・

「あれ?同乗者いたの?」「だったらこの人が事故の瞬間の状況を見ていたのでは?」

しかし違ったようで、どうもたまたま道を歩いていたら事故の音に気付いて引き返して見れば、これもたまたまその女性と同僚で知り合いだったとの事。

その女性はなぜかそのままずっと、最後まで傍らに付き添っていました。

ほどなくして、話をした警官が渋い顔でこちらにやって来ておもむろにこう言います。

「実は、相手の方も信号は青だったようだ。と言ってましてね・・・だったようだ、と言うのはどういう事ですか?ちゃんと青だと確認されたんですか?と聞いても、はい。とおっしゃるんですわ。」

「ただ、向こうのかたがお話しされたように走行した時の信号のタイミングを見てみますとね、まぁ、赤なんですよね・・・」

「でも自分の前に2台か3台くらい他の車が居た気がする。ともおっしゃってますんで、ゆっくり進んでいくと途中で青信号には変わるんですよ。」

「双方の車にレコーダーも付いていないという事ですし、ちょっと見てみたんですが交差点を写してるようなカメラも見当たらないのでね・・・確証できる物も無いみたいですねぇ。」

「警察としては物損である限り、これ以上の介入は出来ないんですよ。後は当事者同士お互いの保険会社を通しての話し合いで解決して頂く事になりますね・・・。」

え?どういう事?

青やったって言ってるの?向こう。

は?なにそれ! しかもカメラ無い?

確証できる物ないって、じゃあどうすんの?

・・・っていうか、あの人いったいどうなってんの?

あれほど「すみません、すみません。」と言ってた相手が “ どうやら相手に大した怪我は無いようだ ”  “ ドラレコやカメラといった確証できる物は無いんだな ” と分かった瞬間から今までの態度を一転させ「自分の方が青信号だった。」と言い放ったのです。

(じゃあ、何か?こちらが赤信号なのに青だったと嘘をついていると!?)

すぐにでも反論したい気持ちを何とか抑え、今後は保険会社を通してお互いの話し合いで解決するようにと警察の方から説明を受けながら、心の中で

「この人はいったいどうしてしまったんだろう?正気なのかな?こんな状況でシラを切って、平気で嘘をつく?いや、普通は無いよな・・・まさか本気で青信号だったと思ってる?いやでも、最初から謝ってたよな。それって、自分の非を認めてた訳じゃなかったの?」

「おいおい、最悪の展開じゃん💦」と困惑しながらも「いや、やっぱり私の方が赤でした。」とか「すみません。実は信号は見落としてしまってました。」とか今からでも思い直してくれないだろうかと少しの可能性に期待をして待ってみましたが、結局は無駄でした。

説明を終えた警察の方が離れ、事故状況を記録するために写真を撮りに車の方へ行ってしまいました・・・。

 

“ 目は口ほどに物を言う ”

この人がもしかして本当に思い違いをしていて、純粋な心から言っているのか、それともこのまましらばっくれていれば、有耶無耶に出来るだろうという邪な心からなのか。

いったいどちらの了見でいるのかを確認する為。

そして、こちらの確固たる自信を相手に伝える為に私は、相手の目を真っ直ぐに見据え

「本当に青信号でしたか?」

「・・・神に誓って?」とゆっくりと静かに、しかし重い口調で尋ねました。

相手の方はうつむき加減で「・・・はい。」とか細く答えます。

(辛うじてこちらに目は合わせるも後ろめたいのか、どうにもいたたまれない。といった感情が目の奥に見て取れます。)

(あ~あ、神に誓っちゃったよ、この人。)

(思い直す最後のチャンスだったのに。)

 

事故に巻き込まれて、もしかしたら大きな怪我を負ってしまっていたかもしれないにも拘らず、暖かい「善」の心で対応して下さった食堂に居られた記者の方と、

それとは真逆に保身の為か、気の迷い?それとも魔がさしたのか、何にせよ人として犯してはいけない罪、嘘をつくという「惡」

この「善」と「惡」極端な人の心の有り様を見せつけられ、静かに怒りに打ち震えるしかない自分に苛まれるのであります。

 

『神主の体験』その④ ~ 神主の覚悟 ~ へと続きます・・・

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鉄やコンクリートが擦れ合った時の摩擦によって生じた、何とも言えない焦げ臭さの漂う運転席で、先ずは冷静に状況を確認しようと数秒間はじっと動かずにいました。

改めて自分の怪我の具合はどうかと腕や首、足などをゆっくりと動かしてみます。

すると直ぐに、衝突した建物の中から驚いた様子で数名の方が出て来られ、口々に「怪我は大丈夫ですか?とにかくすぐに外に出た方がいいですよ!」「あぶなかったねーっ、もう少しで人殺してしまうとこやったで!」「救急車か警察呼びましょうか?」などと声を掛けて下さいました。

それを聞いた私は “ 他に巻き込まれた人はいなかったのだな ” と解り、そこで随分と冷静さを取り戻すことが出来ました。

 

車が突っ込んだその建物は、地元で長年愛され続けている大衆食堂で、この日も少し遅めのお昼のひと時を寛がれている方々で店内は繁昌しておりました。

そこにいきなりドカーンッ!と車が衝突して来たものですから、そうとう肝をお冷やしになった事でしょう・・・。

自分なら定食のお味噌汁を床までぶちまけてしまっていたかもしれません。それでも皆さん、嫌な顔ひとつせずに

中には、ありがたい事に随分とご心配をいただいて「見た感じ、大きい怪我も無い様なので救急車を呼ぶ必要は無さそうですね。警察の方に通報しておきましょうか?事故の瞬間は見ていないので、どういう状況でしたか?」と手際よく対応して下さる男性の胸元には、社員証と思われる某放送局の「記者  ○○  〇○」というネームカードが・・・。

その方の迅速で的確な対応のおかげもあって少しほっとした私は、落ち着きを取り戻し、「お祭りの帰りで、神社まで帰る途中だった」こと、「交差点の信号は間違い無く青だった」こと、「左から信号無視の車が突っ込んで来て、ここまで突き飛ばされてしまった」ことを今あったありのままに説明をしました。

そこへほどなくして、ぶつかってきた相手の運転手であろう女性の方が、慌てた様子で「あぁ、どうしよう」「すみません、すみません・・・」と繰り返しながこちらへ近寄って来られました。

私の姿を見て、一度は「お怪我はありませんか?」と尋ねられたかもしれません。が、その後はただ「すみません、すみません・・・」と繰り返すのみです。

私は「この人は、いったい何に “ すみません ” を繰り返しているのだろう。」と思い、その「すみません」の所在は何処にあるのか、意図する所は何なのかが理解できず、とにかく本人の自覚はどの程度あるのかをはっきりとさせるために「今、あなた、信号は赤でしたよね?」と問いただしてみました・・・

最初からずっと謝っている様なので、てっきり「すみません。信号を見落としてしまって・・・」とか「ブレーキを踏んだつもりが間違えてしまって・・・」とかいう返事が返ってくるものだと想像していましたが、相変わらず「あぁ、どうしよう。すみません、すみません・・・」

ん?

だから、何に対して?

信号無視して事故を起こしてしまった事?

それとも人に怪我を負わせてしまった事?

それとも出会い頭の車を避けきれなかった事?

自分の信号の色はちゃんと確認していたのか、見落としていたのか。どうなの?

自分の方が青だと思って交差点を渡ろうとしたのか。それならそれで、「自分の方が青信号だった」と主張して来るのが普通だし・・・それとも、

まさかとは思うけど、赤だけど今なら大丈夫!なんて考えて無謀な運転をしてしまった事に対しての「すみません」なのか。

さっぱりわかりません。

そうこうしているうち、近くをパトロール中だった警察の方がやって来られました。

先ずはお互いの怪我が無いかを確認し、双方にドライブレコーダーが搭載されているかと確認されます。

「こちらの車はドライブレコーダーは付いていますか?」

「いや、社用車で付いていないんですよ。」

「あなたの方は?」

「・・・私もありません。」

(え?まじかよ。・・・このご時世に2台ともレコーダー付いてないって、あるの?そんな事。)

(おいおい、ドラレコくらい付けとけよー!って、人のこと言えんか。まぁでも、こういう交差点って防犯カメラとか付いてるはずだよね・・・たぶん。)

 

後から思えば、この瞬間こそが本当の意味での「禍津日神の神業(かむわざ)」が顕された時だったのかもしれません。

「魔がさす」、「気の迷い」、様々な表現がありますが、この様な非日常ではいとも簡単に人の心に侵入してきます。

そういった時に、魔を退け、迷いを断ち切れるのは普段から自分を律し、自分の心に正直に生きている人です。

ただ、そういう人ばかりではないのが世の常なのでございます・・・。

 

『神主の体験』その③ ~ 神に誓えますか? ~ へと続きます・・・

 

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(序)

 こどもの頃、何か悪戯をして叱られた時「お天道様がみているぞ。」と窘められたという経験はありませんでしょうか。

「おてんとうさまがみている。」つまり人間の悪事に対して、他の人間が見ていなくても太陽はきちんと見ているのだから、どんな時でも悪事ははたらかぬべきだと説く戒めの語であり、お天道様とは万物を遍く照らし出す太陽の事で神や仏の象徴とも言えます。

これからここへ綴る『神主の体験』は実際に神主の私自身が体験した、一言で言えばまさにこの「お天道様は見ている。」というお話でございます。

 

~ 禍津日神(まがつひのかみ)は唐突に ~

相変わらずのコロナ禍の中で明けた令和の四年も、駆け足であっという間に「節分」そして「立春」と過ぎて行き、県内では「家祈祷(やぎとう)」と呼ばれる氏子さんのお家へ神職がお伺いして、その家の神棚でお祭りをする、いわゆる出張祭が佳境を迎える頃。

如月の十五日。

この日も早朝から柴巻という部落の数件の家祈祷を終え、昼過ぎには神社へといつものように慣れた帰路を車で走っておりました。

天気は晴れ。 午後からは別の神事へ奉仕する予定がありましたが、時間的にはまだ余裕があり、少し遅めの昼食を取ってからでも十分間に合うだろうとゆとりを持って運転をしておりました。

神社まであと数分で到着となる、とある交差点に差し掛かります。主要道路からは一本裏道へ入っている事もあり、道幅は少し狭くなっております。生活道路として利用する自転車や歩行者も多く途中には一時停止の標識もあり、より一層の慎重さが求められる道路ではあります。

とは言え、なだらかなカーブとなっている道路は、スピードが出過ぎるという事も無く、見通しも良いので数メートル先の交差点の信号の色もしっかりと確認する事が出来ます。

(写真では分かりにくいかもしれないが、遠くからでも青信号がしっかりと確認できる。)

仕事終わりで寛いだ帰路を、平日の昼過ぎに流れるカーラジオの音楽をBGMに法定速度内のおよそ35~40km/hで走行。「なだらかなカーブの先の交差点の信号は “ 青 ” 」走行車線側の歩行者用信号も点滅してはいないので、今にも黄色への変わり目という訳でもございません。

青色の信号機を視界に入れつつも交差点の景色をゆったりと見渡しながら、ブレーキを踏んで減速するわけでも無く、ただアクセルからは足を離しブレーキペダルに軽く置いた状態でその交差点へと侵入いたしました。

と、その刹那。左側の視界に飛び込んできた物は、映画やドラマでしか見たことの無いような走行中にはあり得ない位置にある車の姿、と同時に強烈な衝撃を受け、到底抗う事も出来ない強い力で対向車線側の道沿いの建物まで一瞬にして突き飛ばされてしまいました。

まさに、晴天の霹靂とはこのことです。

衝撃を受け、建物に突っ込むまでのおそらくは1秒間にも満たないその瞬間には、「うわっ、当てられた!?くそっ、信号無視だ!」「やばいっ、建物に突っ込むぞっ、人が巻き込まれるかも!」「信じられん!何て事してくれるんだ!」という “ 認識 ” と “ 焦り ” と “ 怒り ” がほぼ同時に湧き上がっていた事をはっきりと覚えています。

結局、車は建物の 「柱部分」 に衝突してエアバックを起動させ、焦げ臭い煙を漂わせながら停車しました。フロント部分は完全にひしゃげ、見るも無残でございます。ただ、建物内部にまで突っ込む事は無く、中にいる人を巻き込まなかったのが不幸中の幸いと言えるでしょう。

(あとほんの少し右にずれていれば、入口の冊子を突き破って建物内へ突っ込んでいたでしょう。)

私自身も衝撃に依る軽い脳震盪と、むち打ちの様な痛み、そして腕に軽い擦過傷を負うも重大な怪我を負う事はありませんでした。

それよりも、信号無視をして突っ込んで来られた事に対する驚愕と怒りの方が沸々と湧き上がってくるのを感じていました。そして「この車は社用車。事故の瞬間を記録するドライブレコーダーが搭載されていないぞ。」という心配が頭をよぎりました。

(角の柱で止まり、二次被害は何とか免れました。)

普段、厄除などのご祈祷の “ 祝詞 ” では「禍津日神(まがつひのかみ)の禍事(まがごと)に蠱(まじこ)りて諸々の事故、怪我、過つ事無く・・・」とご神前にお申し上げをしているのですが、まさか自分がこの様な形で禍津日神の唐突な禍事に中てられるとは・・・。

禍津日神(まがつひのかみ)とは、日本神話に於いて伊弉諾神(いざなきのかみ)が亡くなった妻の伊弉冉神(いざなみのかみ)を訪ねて黄泉の国へ行った際、穢れた身を禊祓いした時に出現した、凶事や災害などの源を司る、わざわいの神でございます。

しかしこのご時世、相手側のドライブレコーダーか或いは交差点に設置された監視カメラなどによって、直ぐに此方側の潔白が証明されるだろう。と考えておりました。

が、この後の展開により「人の咎(とが)」というものに触れる事となるのです。

 

『神主の体験』その② ~ 人は非日常で試される ~ へと続きます・・・

 

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